触ってみた: Chroma

#創薬アドベントカレンダー (dry) 2日目記事。 #souyakuAC2023

先日発表されていた、

Ingraham, J.B., Baranov, M., Costello, Z. et al.

Illuminating protein space with a programmable generative model.

Nature 623, 1070–1078 (2023).

https://doi.org/10.1038/s41586-023-06728-8

拡散モデルでタンパク質構造を生成するやつ。

Chroma と名付けられている。

デモ版が Colab で用意されているので触ってみた。

Colab のノートブックは こちら

Chroma on Google Colaboratory

モデルのウェイトを利用するための API key が必要なので、まず こちら で登録する必要がある。キーを取得したら API key 入力欄に入力。

Features of Chroma

8つのパターンの使い方が用意されている。

これは "Shape" 機能を使って平仮名の形に合わせたタンパク質構造を生成してみたもの。

※ ただし構造を生成できると言っても、それが実際に発現・精製できてフォールドするものとは限らない。

特に面白そうに思ったのは "Natural language" 機能で、プロンプトでどういうタンパク質かを記述して構造を生成させることができる。

「安定な可溶性タンパク質」などと入力して生成させるとそれっぽいものが出る。

とは言うものの、タンパク質の機能や構造など具体的な指定をすると全然反映されていない結果が返ってくることのほうが多い印象。画像生成 AI 同様、欲しい絵が出るまでガチャを回し続けることが必要といった性質のものかもしれない。

配列や構造データそのものを入力してそれを元にして更にこの機能を付与して~~などといった処理も今のところできない(?)のでタンパク質設計に実用するのは現状なかなか難しい気はするが、そのうち img2img のような使い方などが実装されてきたりするようだと有用な使い道も出て来るかもしれない。

みなさんも面白い使い方を見つけたら是非教えて欲しい。

BLOOD 115. Self-Phlebotomy

創薬(wet)アドベントカレンダー 2021 8日目記事。

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自分でワクチン接種後の抗体価の推移を観測できる機会はなかなか無く、せっかくなのでひたすらセルフ採血した記録。

身体を張るとバズるらしい。

ひたすら左の肘窩で採血。血清分離し、Chemiluminescence immunoassay (CLIA) で抗体価を定量測定している。(試薬)

2回目の接種時から原則8ヶ月以上あけてブースター接種をすることとされているので、ちょうどその8ヶ月経過時点ということで久しぶりに抗体価グラフの直近アップデート版を置いておこう。今や抗体価は2回目接種後のピーク値の 20 分の 1 未満となっている。ブースター接種後にはまた毎日採血してみようと思う。

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引き続き出来る限りの感染対策を!

#ChemTwitter

創薬(dry)アドベントカレンダー 7日目記事。

タイムラインで見かけた構造式、そのまま自分でイチから描き直すのは面倒。

そのまま構造式を編集可能な状態でシェアできるツールなので使ってみてほしい。

パープル・ヘイズ・トランスフェクション

創薬(wet)アドベントカレンダー 2021 7日目記事。

今年は LNP 製剤の活躍が目立っていたが、核酸の導入と言えば AAV も引き続きホット。

一昨年 承認された "億超え" 新薬もインパクトがあった。

www.rcsb.org

本邦で製造に強みを見せる企業はどこになるだろうか。

www.nature.com

EXA 初号機

創薬(dry)アドベントカレンダー 6日目記事。

世界で初めて exaFLOPS (10¹⁸ FLOPS) の演算性能を持つ計算機になったのは、分子動力学計算機だった。

とはいえ通常のスパコンのような1台のマシンというわけではなく、

Folding@home による分散コンピューティングである。奇しくもパンデミックに立ち向かうために世界中の人々が一致団結して自宅の電力を提供した結果であり、さながらヤシマ作戦であった。

今はコロナ関連の計算は一段落しているが何かしらの疾患関連の計算は降って来るので、自宅の計算リソースに余力のある人は貢献してみてもいいだろう。 foldingathome.org

第21話 キルア vs. ジョネス

創薬(wet)アドベントカレンダー 2021 6日目記事。

目的化合物の合成は、基本的には「断片を繋いでいく」作戦が普通だが、それとは違った Skeletal Editing (骨格編集) という括りの反応が今年になって何度か報告されていたのでまとめ。

原子を引き抜くもしくは差し込むことによって元の骨格自体をいじってしまう。使いどころがあるのかというとまだよく分からないが、SAR 展開のバリエーションを増やすのにも役立ったりはするだろうか。

The I in the Alphabet.

創薬(dry)アドベントカレンダー 5日目記事 (ポエム)。

この小説は読んだことはあるだろうか? www.kadokawa.co.jp

軽くネタバレになるが、「標的を与えると計算によって完璧な治療薬を創製する」無敵の創薬ソフトウェアが登場する。アミノ酸配列から立体構造を生成する end-to-end の構造予測を実現した AlphaFold2 の薬版のようなものと言えるかもしれない。

はっきりそういうものを目指したものかどうか現時点では不明だが、DeepMind 社から今度は創薬を目指した会社が立ち上げられた。

www.isomorphiclabs.com

ちなみに会社のロゴは Game of Life のセルオートマトンを表しているようだ。

もし無敵の創薬ソフトウェアが誕生したら喜ばしいことではあるが、技術的にはまだだいぶ距離があるとは思う。AlphaFold2 にしても、生物が長い進化の過程で最適化してきたような相互作用の型を有する構造に当てはまらないものについてはあまりまともな構造を出してこないし、点変異や翻訳後修飾などといった細部の考慮もまだできない。あらゆる化合物についてウェットのデータを新たに爆発的に生産・蓄積していくような体制を組めれば無敵の創薬ソフトの創出もワンチャンあるかもしれないが、いずれにしろ現時点で人類が持ち得ている情報だけでは恐らく足りないだろう。機械学習だけでなく ab initio な物理化学計算も組み込めばなんとかなったりする可能性も一応あるのだろうか?

お金が無限にかかったとしても投げ出さずに頑張ってほしいところではある。

www.isomorphiclabs.com