PROTACs™ の最適化要素
創薬(wet)アドベントカレンダー 2021 2日目記事。 Undruggable とされてきた標的の中には、阻害しようとしてもダメで、病因となる分子自体を消し去らないと解決しないものがある。遺伝子編集でどうにかしようといった試みなども進んできているが、低分子によって標的のノックダウンを惹起しようという Targeted Protein Degradation 技術が近年大変ホットな分野となっているのは皆さんご存じの通り。2019 年には PROTAC™ として初の化合物が治験入りした。
アンドロゲン受容体を分解誘導するPROTAC、ARV-110の構造式がアメリカ癌学会 #AACR21 にて開示された。CRBNをリクルートするためのE3 ligand部分はPomalidomideに1ヶ所フッ素を足したものとなっている。
— 叢雲くすり(創薬ちゃん) (@souyakuchan) 2021年4月12日
アビラテロンand/orエンザルタミド不応の転移性虚勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の治療薬候補。 https://t.co/ziW15xBth5
化合物全体の ADMET 最適化が必要なのは当たり前として、構造がざっくり3要素から成るのが PROTAC™ 特有なところで、それぞれ最適化する必要がある。
E3 ligase をリクルートする E3 ligase リガンドの種類: E3 ligase 自体は数百種類あるわけだが、標的組織・細胞で充分働いているものを狙う必要がある。メジャーどころは CRBN, VHL(, IAP, MDM2) 辺り。親和性の高いリガンドが無いと E3 ligase をリクルートできないが、covalent warhead を仕込むことで利用可能な E3 ligase のレパートリーを広げるといった試みもある。
標的タンパク質に結合するリガンド: 表面の凹凸が浅い分子を標的にすることも多いのでここもハードルは高い。
それらを繋ぐリンカー: 生やす位置と長さが degradation 効率に大きく影響する。ternary complex の立体構造を意識する必要がある。
上記3要素から成るのでどうしても分子量はやや大きくなる。細胞膜透過性も必要。「活性は上げる」「物性も良くする」 両方 やらなくっちゃあならないってのが 創薬 のつらいところだな。